寺島実郎監修、日本総合研究所編、日本ユニシス株式会社総合技術研究所システム分析協力『全47都道府県幸福度ランキング2018年版』(東洋経済新報社、2018年)は都道府県や政令指定都市の幸福度をランキングした書籍である。国が提供する統計データ(オープンデータ)などを元に人々の幸福感・生活満足感に影響を及ぼすと考えられる指標を選定し、ランキングを算出する。

ランキングから、自治体を上下に位置づけて、優越感や劣等感を抱くことは正しい使い方ではない。ランキングで浮かび上がった特徴から課題を発見し、政策を改善することが正しい使い方になる。これは地方創生がキーワードになっている現在において重要性が増している。

政令指定都市は47指標でランキングしている。浜松市が第1位に輝いた。さいたま市は前回の2016年版では第1位であったが、仕事分野の順位を落としたことなどから今回は第2位になった。さいたま市の前回と今回の推移は以下の通り。
総合ランキング2位→1位
基本指標2位→1位
健康分野6位→8位
文化分野10位→8位
仕事分野5位→6位
生活分野9位→6位
教育分野13位→13位

さいたま市は確かに雇用環境の点で弱いと感じる。再開発ではマンションを建設するばかりではなく、オフィスの誘致に力を入れるべきだろう。これは通勤ラッシュの緩和にもなる。さいたま新都心がオフィスの集積地として計画されたが、東京資本の既存の支所オフィスの移転が中心との研究がある(佐藤英人『東京大都市圏郊外の変化とオフィス立地 オフィス移転からみた業務核都市のすがた』古今書院、2016年)。他の地域から移転するばかりではプラスマイナスゼロであり、雇用の拡大にならない。

ただ、仕事分野は川崎市が1位、名古屋市が2位、広島市が3位となっている。いずれも重厚長大の工業が発達している地域である。総合1位の浜松市も製造業の集積が評価された。昭和的な産業意識である。GAFAがヨハネの黙示録に因み四騎士と称されるインターネット社会では違和感がある。逆に仕事分野のランキングが低い地域は重厚長大産業のしがらみが薄いため、人工知能AIやドローンなど21世紀型の産業政策をドラスチックに展開できるポテンシャルがあるだろう。

さいたま市が総合ランキング第1位となった要因は勤労者世帯可処分所得が高いことである。所得の高い住民が多いことは自治体にとって結構なことであるが、貧困者にとって住みにくい街になっていないか気になるところである。東京に出かけてサービスを享受する費用と余裕のある人々には住みよい街ということでは、さいたま市が自慢できることではない。そこまで考えると、大阪市のような自らが賄わなければならない中枢都市と衛星都市を比較することが公正かという疑問も出てくる。

東京大都市圏郊外の変化とオフィス立地 オフィス移転からみた業務核都市のすがた
http://www.honzuki.jp/book/265368/review/205517/