歌手の沢田研二さんは2018年10月17日、埼玉県さいたま市中央区の「さいたまスーパーアリーナ」で開催予定の公演を開場直前に突如中止しました。さいたまスーパーアリーナは可動式の客席で、最大3万7000人収容可能ですが、約7000人の集客状況でした。

沢田さんは以下のように説明します。「客席がスカスカの状態でやるのは酷なこと。『ライブをやるならいっぱいにしてくれ、無理なら断ってくれ』といつも言ってる。僕にも意地がある」(「沢田研二が自ら中止の理由を説明「客席が埋まらなかったから」「ファンに申し訳ない」と謝罪」スポーツ報知2018年10月18日)。

今回の件で最も非難されるべきは、契約上の人数を集められなかったイベンターと指摘されます。ダウンタウンの松本一志さんは「イベンターのプロ意識はどうなるんだって話。プロなら約束したように満杯にしてくれよ。それができなかったのに、なんでこっち(出演者)はプロ意識を追及されるのか」と指摘します(「松本人志、沢田研二ドタキャンに熱弁「イベンターのプロ意識低い」」サンスポ2018年10月22日)。

私は当初、消費者の立場から一人でも観てくれる客がいれば公演すべきと考えました。地下アイドルの頃のAKB48は客が数人でも公演しました。それこそが歌手の意地や矜持です。
一方でイベンターへの怒りにも共感します。契約通りの条件でコンサートを履行できないことが分かっていたならば、その時点で沢田さん側に伝えて、中止するか開催を強行するか決定してもらうべきでした。事前に伝えず、当日に伝えて、「もうお客さん集まっているから開催しないわけにはいかない」と目の前の問題解決を押し付けられたならば、激怒することは当然です。情報後出しの不誠実な態度が許せず、その怒りが勝って公演中止になったと考えられます。

マンション売買契約を消費者契約法違反(不利益事実の不告知)で取り消した立場として、不誠実な契約相手に対してキャンセルすることは理解できます。日本は不利な条件を個人の頑張りで何とかすることを美談とする傾向がありますが、その種の「頑張ります精神」の押し付けが鬱病や自殺を増加させています。そのような理不尽を通用させないという点では公演中止に意味はあります。