テーマは「館」。館ミステリーの書評を収録する。館はミステリーの重要な設定になることが多い。館にはロマンがある。戦後日本は安直にスクラップアンドビルドを繰り返してきた。暴力的な地上げも行われてきた。そのアンチテーゼとして人を寄せ付けない、または人を呑み込んでしまう、人の力の及ばない館に惹かれる。
収録作品には伝統的なミステリーの枠に収まらない多様な作品がある。どれもある意味で怖い作品である。
林檎飴中毒者「4回死んだ姫」は『Re:ゼロから始める異世界生活』などのライトノベルの影響を感じさせる。教条主義的なミステリー唯物論者を嘲笑う自由さがある。
水世絃「犯人」も自意識の不明確さが描かれる作品。救いのない結末に対しては、変えることはできなかったかと考えたくなる。最後の視点人物が刑事に移ってしまっている点は主人公の苦しみの余韻に浸りたい向きにはどうなのかと思うところがある。
E・S「少女Eの日記」は本格的なクローズド・サークルの雰囲気を出しているが、やはり怖い作品である。全てを説明していないことで怖さが出る。