平林博『最後の超大国インド 元大使が見た親日国のすべて』(日経BP社、2017年)は、元駐インド大使がインドを紹介した書籍である。インドはカースト制があり、格差が大きい。それでも民主主義が浸透している。その背景の一つには有権者の積極的な政治参加意欲を挙げる。特に低カーストの投票率が高い。これは日本も見習うべきだろう。

インドは人口も面積も巨大であり、言語や民族も多様である。それでも国としての統一が保たれている理由として高級官僚システムを挙げる。高級官僚試験合格後は各州に配属され、中央政府の省庁と所属する州政府を行き来しながら昇進する。

外務官僚の著者が好意的に評価することは理解できるが、エリートの独善に陥ることはないのか。恐らく高級官僚が地域ボスを抑制することで、結果的には多くの発展途上国よりも良い行政が行われているのだろう。しかし、それは民主主義の本来のあり方からすると好ましくない。

本書はインド政府が政教分離を重視していると主張する。これは過去にヒンズー教徒とムスリムの対立と流血の悲劇があったからである。伝統的なインド政府の見方としては正しい。しかし、ヒンドゥー至上主義者と批判されがちな現在のモディ政権によって変わるかもしれない。