朱熹『宋名臣言行録』は北宋時代の名臣達の言動をまとめた書籍である。朱熹は朱子学の大成者である。名臣とあるが、必ずしも立派な人々とは限らない。政治闘争の陰険さにはウンザリさせられる。肯定的に評価できる人物の言動も秀才的なものが多い。歴史の書物を読むと感じる規格外の大物の面白さは乏しい。

北宋は科挙制度が徹底し、門閥貴族は姿を消した。これは歴史学的には発展と評価されることが多いが、官僚化して政争が陰険化した。冗官の増加も科挙制度の拡充の弊害である。これも現代日本の官僚制に重なる。

北宋の大きな政治改革は王安石の新法である。大商人・大地主達の利益を制限して中小の農民・商人らを保護する政策であった。既得権を奪われる大商人や大地主達は抵抗し、新法・旧法の争いという激しい政治対立を生んだ。表面的には新法を評価したい。

しかし、後には新法も無駄な役人や規制を増やし、政府の効率を悪化させる弊害が生じた。低利の融資制度も官人や大商人が偽って借りるという、政府の再配分政策が格差を拡大する本末転倒の運用がなされた。福祉国家の失敗や非効率という現代にも通じる問題である。やはり官僚が役所で考えた理想論は上手くいかない。