キャス・R・サンスティーン著、山形浩生訳『スター・ウォーズによると世界は』(早川書房、2017年)は『スター・ウォーズ』ファンの法学者が『スター・ウォーズ』愛を語った書籍である。原題は『The World According to Star Wars』。

本書は『スター・ウォーズ』の魅力を多様な解釈の余地があること、選択の自由を登場人物に突きつけていることと指摘する。ここには自由主義の国アメリカらしさがある。多くのSF作品では未来社会を高度な管理社会と描いた。ジョージ・オーウェル『1984年』が典型である。しかし、神ならぬ人間が管理しきれるものではない。管理者の恣意的な権限の行使が横行する。それは社会主義体制の崩壊が示している。

これに比べると『スター・ウォーズ』の世界は良く言えば管理されていない、悪く言えば無秩序である。単純に西部劇の枠組みをスペースオペラに持ってきただけかもしれない。しかし、それは高度な管理社会が進むという発展的な歴史観にナイーブさを感じる人々の感覚に合っていた。

本書は『スター・ウォーズ』という作品自体が制作者の緻密な計画に従って完成したものではないとする。ダース・ベイダーは当初、ルーク・スカイウォーカーの父親ではなかった。それどころかチョイ役と考えられていたという。アウトプットが当初想像もしていなかったものになるという計画の誤謬のある作品である。

これは裁判官の憲法解釈にも重なると本書は指摘する。裁判官は自分では変えられない憲法という枠組みで判決を書く。しかし、それでもかなりの創造性を行使できる。実際、言論の自由や女性の権利、黒人の権利など20世紀前半と21世紀では大きく変化した。本書は裁判官が過去の判例を踏まえながらも、憲法を最高のものにするための、次のエピソードを書かなくてはならないと主張する。そのような理想と意欲を官僚化が指摘される日本の裁判官に期待できるだろうか。

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