石山アンジュ『シェアライフ 新しい社会の新しい生き方』(クロスメディア・パブリッシング、2019年)はシェアリングエコノミーの解説書である。シェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイル「シェアライフ」を提案する。

シェアリングエコノミーは試験段階から、スピードと拡張性をもって真の変革への移行が期待される時代に入った。そこでは人の生き方を劇的に変化させる。モノが溢れる社会を豊かさとする昭和的な価値観に対し、必要なものがあれば十分であり、家も、仕事も、子育ても、誰かとシェア(共有)すればいいという価値観が生まれ、支持されるようになっている。

本書はシェアリングエコノミーが資本主義の歪みを是正し、人間が人間らしく生きることができる持続可能な社会のインフラになると主張する。資本主義の歪みの一つに大量生産・大量消費がある。シェアリングエコノミーでは新たに物を買うのではなく、既存のシェアされた物を利用する。シェアリングエコノミーは消費の抑制になる。

もう一つは人々が貨幣だけに交換価値があると考えてしまうことである。しかし、人間の歴史を遡れば物々交換が当たり前であった。物を介して人のつながりを感じるシェアリングエコノミーには、資本主義で失われがちな人間らしさがあるとする。

本書が貨幣だけに交換価値があるとする思想を批判することは興味深い。私は消費者として商品の価格と品質が比例するという拝金主義的発想の愚かさを主張してきた。自分が欲しいものではなく、自分に価値を提供するものでもないのに、価格が高いということでありがたがることは愚かである。自分が楽しむために消費する私にとって高価格を喜ぶ拝金主義的発想は理解できないものであるが、貨幣だけに交換価値があるとする思想が根底にあると分かりやすい。

資本主義の是正は20世紀においては、社会主義やケインズ経済、福祉国家のように市場を敵視し、公的セクターの役割を大きくする解決策が主張される傾向があった。しかし、それは政府の失敗をもたらした。これに対してシェアリングエコノミーは市場に依拠する。国家の定めた基準である貨幣だけとしない点で、市場主義を徹底して資本主義を是正するアプローチである。

シェアリングエコノミーと言えば、人とのつながりやコミュニティが強調される傾向がある。その要素は本書にも存在する。たとえばシェアの原風景を長屋文化とする。しかし、本書の面白いところは、人間関係重視の昭和の感覚への先祖帰りとは異なる視点を指摘することである。本書はレイチェル・ボッツマン『シェア<共有>からビジネスを生み出す新戦略』に言及して、信頼関係がローカルなものからインターネットやテクノロジーに支えられる「分散された信頼」に発展しつつあるとする。

実際、シェアリングエコノミーは一つの組織に縛られず分散させる効果がある。分譲住宅を購入せず、シェアハウスに住むことは何十年もの住宅ローンに束縛されない。クラウドソーシングのような働き方のシェアは収入や肩書き、人間関係、やりがいなどの依存先を複数に分散する。まだまだ日本社会には、村社会的な体質が残っており、家族的経営を謳うブラック企業なでによって拡大再生産されている。シェアリングエコノミーは必要な時に必要な物を介してだけ結びつくという人間関係の希薄化や合理化というメリットこそ求められているように感じる。