『麻雀放浪記2020』は阿佐田哲也『麻雀放浪記』を原案として、2019年4月5日に公開された映画である。坊や哲(斎藤工)が1945年から2020年にタイムスリップする。『麻雀放浪記』とは物語の時代が異なる。あくまで原案としただけの新たな作品である。清水洋三『麻雀放浪記2020』(近代麻雀コミックス)は漫画版である。

坊や哲がタイムスリップした2020年の日本は監視社会化したディストピアである。監視カメラやマイナンバーによる監視社会化が進み、警察はデモ参加者に殴る蹴るの暴力を加える。東京オリンピックは戦争で中止された。オリンピック会場予定地ではオリンピックの代わりにAIと人間を麻雀で戦わせる麻雀世界大会が開催されることになり、坊や哲が参加する。エンジニアの林田(矢島健一)が開発したAI搭載アンドロイド(ベッキー)が人間の参加者を迎え撃つ。

映画に出演したピエール瀧はコカインを使用したとして麻薬取締法違反容疑で逮捕された。しかし、他出演作品の自粛とは一線を画し、ピエール瀧出演シーンをノーカットで劇場公開した。警察の横暴や個人情報無視など権力批判が鋭い作品である。ピエール瀧が演じる杜という人物自体が森喜朗元首相を風刺した存在である。もし映画が公開中止となったら、公開中止とするための権力側の策略ではないかと陰謀論に与したくなる。

実際、ピエール瀧の冤罪を指摘する声がある。コカインの恐ろしい症状にコークバグがある。コカインを摂取していると、体中を小さな虫に這い回られるような感覚に陥る。ここから皮膚をひっかき、皮膚が裂ける傷が体中にできる。この傷がコークバグである。冤罪説は、半裸パフォーマンスの多いピエール瀧の身体にコークバグは見られないと指摘する。

ピエール瀧の擁護意見には依存性薬物を問題ないと開き直るものが見られた。そのような意見には同意できない。危険ドラッグ中毒者が交通事故を起こすなど依存性薬物は本人だけの問題ではなく、社会悪である。それに比べると上記の冤罪説は依存性薬物の恐ろしさを広めることと両立する主張である。