イミギョン著、清水知佐子訳『クモンカゲ 韓国の小さなよろず屋』は韓国の日用品店「クモンカゲ」をテーマにしたエッセイ画集。クモンカゲは小さな店という意味である。懐かしさを覚える店であり、近代的なスーパーやコンビニに取って替わられ、姿を消しつつある。
日本で言えば昭和文化になるだろう。しかし、昭和文化は、ただただ懐かしむばかりである。セピア色のイメージがある。これに対して本書は鮮やかである。懐かしむだけの存在ではない。生活が感じられる。
店の周囲には大きな樹木があることが多い。これは日本の昭和の小規模店舗の典型ではない。日本はもっと建物が密集しているイメージがある。緩やかさを感じる。
ここからは都市というよりも田舎の店という雰囲気がある。品物は都市住民が消費生活を送るためのものと変わらない。韓国は昔から田舎も都市的な水準があったのだろうか。のんびりしながらも、消費生活の便利さがある。
本書には韓国各地のクモンカゲが描かれるが、表紙裏の「クモンカゲを記録した主な場所」では慶尚北道だけはない。韓国の古都と言うべき場所にはない。この点でも懐かしいだけの存在ではないと言える。
本書の日本語版には「日本のクモンカゲ」と題して、日本の古い店舗を紹介する(112頁)。著者は「うらやましくてしかたがなかった」と書くが、日本人読者へのリップサービスか「隣の芝生は青い」になるだろう。
クモンカゲは1970年代のセマウル運動で全盛期を迎えたとする(117頁)。国連開発計画(UNDP)と経済協力開発機構(OECD)は2015年9月にニューヨークの国連本部で「セマウル運動高官級特別行事」を開催した。そこではSDGs達成のため、途上国の農村開発でセマウル運動を参考にすることが議論された。クモンカゲの魅力は伝統だけではなく、近代性にもあるのではないか。