林部健二『なぜアマゾンは「今日中」にモノが届くのか』(プチ・レトル、2017年)はAmazonの物流戦略を中心に経営理念や企業文化を明らかにする書籍である。顧客満足度は、注文品が予定通りに傷のない状態で届くというスピードと品質に依存する。配送中に商品が壊れた通販を二度と利用したいとは思わないだろう。これを実現するためにAmazonは物流に巨額の投資をしている。

インターネット通販は無数の商品を扱えるという点で画期的である。インターネット以前からもカタログ通販やテレビ通販という形で通販は存在していた。しかし、これらはカタログ紙面や放送時間によって紹介できる商品数に制約があった。これに対してインターネット通販は販売見込み数の少ないニッチな商品も販売可能になり、ロングテールを活用できるようになった。

Amazonが物流のサービスレベルを注力することは正しい結論である。リアル店舗は従業員の接客が消費者との接点になる。これがAmazonにはない。顧客の手元に商品を届けるところが唯一の物理的な接点である。それ故に、ここに注力する。

唯一の顧客との物理的な接点が商品を手元に届けるところであることは、誤魔化しがきかないということである。従業員の接客で誤魔化されることもある。極論を言えば悪徳商法や詐欺犯は接客の名手という面がある。京都府警の警察官が捜査を名目に高齢者から金をだまし取る詐欺犯罪が起きたが、詐欺警察官も高齢者の健康を気遣うような発言をしていた。これに対してAmazonは消費者にとって実質的な買い物ができる。

日本ではAmazonの高い要求に応え続けることが配送業者を疲弊させると問題視されている。しかし、Amazonが高い要求をすることは消費者の生活を便利にしている。まだまだ日本は消費者の利益よりも、事業者の存続を優先して考える事業者本位の発想が根強い。

Amazonはヤマト運輸の配送料値上げ要求を渋々受け入れつつも、小規模な会社と手を結ぶことによって、配送を分散させ始めている。配送先の分散による競争力の強化は米国Amazonと同じである(角井亮一『すごい物流戦略 アマゾン、ニトリ、ZARA……』PHP研究所、2018年)。