『鉄鍋のジャン』は銀座にある最高峰の中華料理店・五番町飯店を舞台としたグルメ漫画。料理を勝負とする秋山醤(ジャン)と、料理を心とする五番町霧子が激突する。

ジャンはスパルタ的に育てられた。『巨人の星』的な世界である。これに対して、五番町飯店のオーナーは現代的である。先輩従業員の新人いびりに対して、「今は昔とは異なり、昔の教育法は通用しない」と断言する。戦後昭和の高度経済成長期の「成功体験」を絶対視しない老人世代の方が逆に21世紀的な面がある。

本作品ではXO醤が料理を美味にする魔法のような調味料として登場する。このようなものが登場すると調味料を使えば解決となってしまい、漫画が面白くなくなる危険がある。しかし、本作品では、旨過ぎる調味料を下手に使うと素材の味そのものを壊してしまうとする。素材の味を引き出すことが料理とする立場からは真っ当な方向性である。

その後は料理人対決のコンテストに突入する。ジャンは評価できたり、できなかったりする。幻覚作用のあるキノコを使用し、食べた人を依存症のようにしてしまう料理は邪道である。これは悪役の料理である。一方で安い材料を使いながら、手をかけて旨味を何倍にもする料理が高級食材を使った料理に勝利することは痛快である。これは主人公的である。