藤井保文、尾原和啓『アフターデジタル』(日経BP、2019年)はオフライン行動が全てデジタルデータとして取得され、オフラインがデジタル世界に包含される世界のビジネスの変化を論じた書籍である。このオフラインがデジタル世界に包含され、オフラインとオンラインの主従関係が逆転した世界をAfter Digitalと本書は呼ぶ。

今やモバイルデバイスやセンサーの普及し、行動データを高頻度で取得することが技術的に可能になった。現実に中国ではアリペイなどのモバイル決済やシェアリング自転車が普及しており、日本より先行している。インターネット時代に「リアルのコミュニケーションも大事」というバーチャルとリアルの二元論が唱えられた。これに対して、中国の先進企業はオンラインとオフラインを融合し一体のものとした上でオンラインにおける戦い方や競争原理を考える。

本書はオフラインとオンラインの主従関係が逆転する前をBefore Digitalと名付け、逆転した後をAfter Digitalと呼ぶ。紀元前をBefore Christとする英語の発想である。生半可な英語知識の日本人にはAfter Digitalをデジタル後の世界と解釈して、デジタル偏重を見直す先祖帰りした世界を想像する人がいるかもしれない。しかし、真逆の意味である。

このような生半可な英語知識では真逆の意味に解釈する危険は他にもある。Free DrugやDrug Freeは依存性薬物からの自由であり、依存性薬物を排除した世界である。しかし、自由に依存性薬物を摂取できる世界と誤解する日本人がいるかもしれない。

After Digital時代のビジネスは、オフラインからオンラインまで生活の至るところに顧客接点を作り、顧客の行動データを取得する。その行動データを活用し、顧客に対して最適なタイミングで最適なコミュニケーションを取り、商品・サービスの購入へと導く。消費者のニーズを無視したマンションだまし売りや消費者の時間を奪うマンション投資の迷惑勧誘電話は時代遅れの営業手法になる。