グレン・ハバード、ティム・ケイン著、久保恵美子訳『なぜ大国は衰退するのか 古代ローマから現代まで』(日本経済新聞出版社、2014年)は大国が衰退する理由を経済学の見地から説明する書籍である。古代ローマ、中国明朝、スペイン、オスマン帝国、日本、大英帝国、ユーロ圏、カリフォルニア州、米国を分析する。

本書は衰退の原因を経済的不均衡とする。この経済的不均衡は説明が必要である。多くの日本人は経済的不均衡と言えば貧富の差を思い浮かべるかもしれない。貧富の差の拡大が体制を動揺させ、文明を衰退に導くとの主張は新味がない。むしろ、本書が念頭に置いているものは財政の不均衡である。つまり、財政赤字が大きくなると衰退するという。現代貨幣理論Modern Monetary Theory; MMTとは真逆の主張である。

しかし、これは実は大変な問題がある。発展する大国は、発展の負の面として貧富差が生じる。この発展の負の面に手当てしようとすることは、むしろ真面目な為政者が取り組むことである。ところが、そのための福祉国家の拡大は財政赤字を拡大させる。それでも対策を進めるために中央集権化した統治や軍事独裁に進みがちである。これが経済の不均衡を解決できない国家の政治的停滞であり、衰退の原因になる。

目の前の問題を解決するためにコストを度外視してはならず、財政均衡を常に考えなければならない。大きな政府の官僚による経済統制が滅亡の主因になる。アメリカン・スタンダードが表れている。