関眞興『19世紀問題 近代のはじまりを再考する』(PHP研究所、2019年)は19世紀の世界史を語る書籍である。民族問題や紛争・テロ、経済格差という現在の世界的な問題の種が19世紀に蒔かれていたと指摘する。そこには国民国家という発想が大きい。

19世紀を語るためには、18世紀末からの産業革命や市民革命から始める必要がある。これらは人類史の進歩と位置づけられるが、多くの人々にとっては生存が脅かされることになっていたとする。既存の相互扶助のコミュニティーや精神が解体され、一人ひとりの人間が自分の力で生きていかなければならなくなった。

この問題を克服するために1930年代に国家が経済を主導する経済政策が実践された。第一にケインズ経済学を背景にしたフランクリン・ルーズベルト米国大統領のニューディール政策。第二にドイツのアドルフ・ヒトラーの国家社会主義。第三にスターリンの社会主義計画経済。それぞれ思想的基盤は異なり、互いに批判しあう関係にあったが、国家主導の経済という点で似通っている。19世紀の生んだ国民国家というフィクションの呪縛の結果だろう。

国家主導経済は官僚の無能や怠慢によって無駄や非効率を生むことが明らかになり、20世紀末からは市場を重視する新自由主義が広まった。産業革命に匹敵するIT革命と呼ぶべき自体も進行中である。21世紀序盤は19世紀序盤と重なると言えるだろう。この環境変化を国家共同体の力で管理しようとする20世紀的発想を繰り返すならば進歩がない。市民革命が夢見た個人が縛られずに自由に生活できる社会を目指したい。