林田力 何者のだましの堤防も崩す

『東急不動産だまし売り裁判』著者

ノンフィクション著者。『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』マンションだまし売り被害を消費者契約法で解決。何者もだまし売りのない世界へ。だまし売りNoでSDGs。消費者の堤防/Amazon Kindle出版/林田医療裁判/中野相続裁判/二子玉川再開発問題/書評/マンガ/YouTube
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2019年06月

アリババ 中国eコマース覇者の世界戦略

ポーター・エリスマン著、黒輪篤嗣訳『アリババ 中国eコマース覇者の世界戦略』(新潮社、2015年)は中国の巨大IT企業のアリババや創業者のジャック・マーを紹介した書籍である。著者はアリババの副社長を務めた人物である。

今でこそアリババは巨大IT企業であるが、米国カリフォルニア州への展開は大きな失敗であり、撤退を経験している。そこからの立て直しは米国の流儀に似ている。グローバルスタンダードと言えるかもしれない。

基本的な理念を言語化し、それに基づいた人事制度を展開した。透明性あるルールに基づいた公正な扱いである。とりあえず対面で会って話せば分かるという日本流のコミュニケーション至上主義ではない。また、アリババのオフィスには二段ベッドがあり、エンジニアが寝泊まりしていた。それも改革で撤去された。猛烈な働き方の否定である。

このように考えると昭和の日本的組織は異端と言えるかもしれない。グローバルスタンダードの強調に対して、それはアメリカンスタンダードに過ぎないという反論が日本にはありがちであるが、中国のビジネスパーソンの方が昭和マインドよりもアメリカンスタンダードに親和性がある。シリコンバレーとは異なるチャイナ・ドリームというより、シリコンバレーの文化に包含される。昭和マインドに固執すると世界から爪弾きになるかもしれない。

Amazonの創業者ジェフ・ベゾスはジャック・マーを評価している。米国企業が南米の密林、中国企業がアラブの昔話の主人公を社名にしている。異国趣味を感覚として持つことが共通点と言えるかもしれない。

林田と播州そうめん

林田は播州そうめん「揖保乃糸」の産地である。素麺は夏の涼味である。揖保乃糸は麺がツルツルしていて、喉越しが良い。揖保乃糸はネギとシイタケで食べることが定番であるが、トマトソースで食べるトマトそうめんなどもある(「揖保乃糸を8種の食べ方で 姫路で試食会」神戸新聞2018年7月2日)。播州そうめんは結婚式や誕生日などの祝い事でも食べられる。
揖保乃糸は三輪そうめん、小豆島そうめんと共に日本三大そうめんを構成する。兵庫県たつの市が代表的産地として紹介されることが多いが、姫路市林田町も産地である。揖保乃糸は手延べそうめんである。手延べはコシを出すために、熟成を重ねながら麺を徐々に引き延ばして細くしていく製法である。
古くから播州そうめんは名産品として知られていた。兵庫県揖保郡太子町の斑鳩寺の寺院日記「鵤庄引付」の応永25年(1418年)9月15日の条に「サウメン」が登場する。応永25年は室町時代である。征夷大将軍の足利義持が異母弟の足利義嗣を殺害する。
江戸時代には農家が副業として生産していた。播州平野で採れる小麦や赤穂の塩が原材料に使われた。ところが、生産量が増えると、粗製乱造により産地の信用を落とす生産者も現れた。そこで龍野藩と林田藩、新宮藩の素麺屋仲間が慶応元年(1865年)に「素麺屋仲間取締方申合文書」を交わし、品質等について取り決めた。違反者には二両の罰金を科すとした。
新宮藩とあるが、この時代は三千石の旗本寄合である。新宮藩は1万石の藩であったが、寛文10年(1670年)に藩主が早世し、末期養子が認められずに断絶した。主家の備前岡山藩主・池田光政らの運動で藩主の弟が新宮に三千石の旗本となった。
林田藩と新宮藩は縁がある。林田藩の初代藩主の建部政長の母親は、本願寺僧侶・下間頼龍の娘である。新宮藩の初代藩主の池田重利は下間頼龍の息子である。
林田藩と新宮藩は備前岡山藩・池田家を主家とする点でも共通する。建部政長の母親は池田輝政の養女である。下間頼龍の妻は池田恒興の養女である。これに対して龍野藩は老中を出す譜代大名であった。このような藩の事情を超えて、「素麺屋仲間取締方申合文書」が出たことには大きな意義がある。
「素麺屋仲間取締方申合文書」の後も、播州素麺は生産者組合の力が強く、それによって品質が守られている。業界内に悪質な業者を駆逐する意識があることは、マンションだまし売り被害者として賞賛する。
明治時代になると「揖保乃糸」を商標登録し、「揖保乃糸」のブランドで販売するようになった。製造工程で上下に伸ばして乾燥される麺は純白の絹糸のようである。
兵庫県手延素麺協同組合は1992年に製造家養成、製麺研究のための施設として、メンテック林田を竣工した。メンテック林田は2003年にリニューアルし、手延麺のモデル製造工場として内容を充実させ、見学通路も作った。兵庫県手延素麺協同組合林田支部では2007年に立体自動倉庫を竣工した。工場と言っても手延べそうめんであり、手を使う工程が多い。

やきにくソースがグッとくるベーコンダブチ(ヤグチ)

「やきにくソースがグッとくるベーコンダブチ(ヤグチ)」はダブルチーズバーガーにスモークベーコンと焼き肉ソースを加えました。ベーコンはパティの上、焼き肉ソースはパティの下にあります。
最初はヤグチと呼びたいために焼き肉ソースを使ったのではないかと思いました。ベーコンダブルチーズバーガーは普通に考えられるメニューです。しかし、食べてみると焼き肉ソースの果たす役割が大きいことが分かります。てりやきマックバーガーのように別の味のハンバーガーになります。ヤグチと言えばモーニング娘。の矢口真里を連想します。モーニング娘。の矢口真里のようにダブチの存在の中で変わった存在です。
Yakinuku Sauce Bacon Double Cheeseburger is limited edition of Double Cheeseburger. It is added to Double Cheeseburger with a bacon and Japanese barbeque sauces. The sauces are mostly soy sauce mixed with sugar, sake, garlic, and other ingredients. They are packed full of flavor.

インド・シフト

武鑓行雄 『インド・シフト 世界のトップ企業はなぜ、「バンガロール」に拠点を置くのか?』(PHP研究所、2018年)はバンガロールを中心にインドの強みを紹介した書籍である。バンガロールはインド南部の都市であり、IT企業が集積し、インドのシリコンバレーと呼ばれる。

かつてインドは社会主義的な経済政策の国であった。それが経済自由化に転換し、Software Technology Parks of IndiaのようなIT振興策に取り組むことが今日のIT大国をもたらした。官僚主導の計画経済は成功しない。これは戦後日本の経済発展も今や成功モデルにはならないということである。

一方でインドはインフラが未整備で貧困などの社会問題が山積している。インドで生活していればトラブルは日常茶飯事である。だからこそ適応力やマネジメント能力が自然と鍛えられる本書は好意的に評価する。本書の側面があることは否定しないが、弊害もあるだろう。高性能な精密機械が壊れやすいように、才能が環境に潰されることもある。それは社会的な損失である。また、納期遅れも日常茶飯事ならば取引先として避けたい。

インドの強みは理解できるが、中々大変であることも理解できる。インドを見習って、日本も焼け野原から経済大国にするような昭和のバイタリティをもう一度とはならないだろう。インドにはインドの良さがあるとして、日本はもっと生きやすい、楽に生きられる社会を志向したい。

丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?

小野正誉『丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか? 非効率の極め方と正しいムダのなくし方』(祥伝社、2018年)は、うどんチェーンの丸亀製麺の好調の理由をまとめた書籍である。味やサービスの質を保つために費用や手間を惜しまない。一方で顧客の無駄はなくす。

例えば丸亀製麺はセントラルキッチンをつくらない。店舗に製麺機を設置する。うどんを店内で作る臨場感が美味しさを高める。これを読んでアジア人の屋台への反応を思い出した。日本人は屋台を不衛生と感じる人が少なくないが、アジア人は逆に材料や調理過程を確認できる屋台の方が食の安心があると考える(川端基夫『消費大陸アジア 巨大市場を読みとく』筑摩書房、2017年)。これに通じるものがある。

味やサービスの向上ならば非効率でも追及する。一方で消費者の負担になる無駄は無なくして効率化する。例えば顧客はネギや天かすを取るために店の中を歩かなければならない。これは無駄である。このため、ネギや天かすの容器を複数個所に置き、顧客が移動する歩数を減らした。また、お冷のピッチャーをテーブルに置き、お代わりをそのまま汲めるようにした。

消費者を無駄に歩かせない。これと逆のことが二子玉川ライズの再開発では行われた。再開発ではバス停を二子玉川駅から離れた場所にした。駅からバス停、バス停から駅に移動するためにはショッピングセンターを通り抜けなければならない。これによって買い物する客が出るという卑怯な手口である。消費者の需要に応えるものではない。

無駄をなくして効率化を進めることは必要である。効率化の行き過ぎや弊害を指摘する声があるが、楽にしたいという思いが文明を発達させてきた。頑張ることを美徳する昭和的なメンタリティは生き辛くするだけである。むしろ何のための効率化であるかが問われる。消費者に負担を押し付ける効率化は批判できる。

消費大陸アジア 巨大市場を読みとく

川端基夫『消費大陸アジア 巨大市場を読みとく』(筑摩書房、2017年)はアジアの市場や消費を分析した書籍である。アジア各地に進出した日本企業の成功・失敗事例から、アジア市場固有の論理を明らかにする。

本書が強調していることは、同じ商品や店舗も、市場によって異なる意味や価値を持っていることである。世界どこでも同じ味、同じサービスをアピールするマクドナルドですら国によってイメージは異なる。中国では子供の誕生日パーティーを開く店であり、インドでは週末に家族で出かける少し高級な店になる。顧客が求めることは製品そのものではなく、課題の解決である。良い商品だから売れるという高度経済成長期の日本の「成功体験」は今や足枷である。

興味深い点は屋台に対するアジアの価値観である。屋台を店舗に比べて不衛生と感じる日本人は少なくないだろう。しかし、アジア人によっては逆に屋台の方が食の安心につながる。屋台は消費者が食材や調理過程を間近で見ることができるためである。

消費者に対して一方的に企業を信用してという論理は成り立たない。消費者への判断材料を適切に示すことが企業の信頼につながる。アジア人の方が合理的で賢い消費者と言える。今後は日本市場もアジア化していくだろう。

本書は中国人観光客が何故、日本ドラッグストアで爆買いする背景を説明する。中国では個人病院の開設が認められておらず、都市部に遍在する総合病院に選択肢が限られている。このため、中国人にとって通院はハードルが高く、できる限り家庭薬で治そうとする事情があるという。

これは公共セクターが計画的に供給する社会主義の失敗を物語る。計画経済では官僚が計画を立案するが、官僚は各地の需要に対応することができず、供給不足を引き起こす。現実に社会主義体制崩壊前のソ連や東欧の社会主義国では食料品を買うための大行列が日常になった。中国は市場経済を導入して消費財不足を回避したが、医療のようなより公的なサービスでは計画経済の弊害を払拭できていない。

本書は「中間層の拡大」や「中間層の所得の向上」という曖昧な言葉に踊らされる危険を戒める。ここには中間層の拡大や底上げこそが国の経済発展の原動力という昭和的なイデオロギーがある。何をやっても売れた高度経済成長期の「成功体験」でアジア市場に進出しても手痛く失敗するだろう。現地の消費者感覚を知ることが海外進出の成功につながる。

ダブチのトモダチ

ダブルチーズバーガーは100%ビーフパティ2枚とチェダーチーズが挟まれたハンバーガーです。愛称はダブチ。2017年の第1回マクドナルド総選挙の人気投票No.1に輝きました。
ダブルチーズバーガーとビッグマックの相違は、後者がパンの間にパンが挟まっていることです。ここからダブルチーズバーガーの魅力は二点あります。
第一にパンが挟まっていない分、ハンバーガーの高さが低くなり、食べやすくなることです。ビッグマックのように高さがあるハンバーガーは、かぶりつくことが大変です。食べている間に崩れることもあります。これに対して、パンを挟まなければ、ビーフパティを重ねても高さはそれほどではありません。グルメバーガーのように気取らなくても食べられます。
第二にパンが食べたい訳ではない、ビーフパティが食べたいという向きに合っています。ハンバーガーの魅力は具です。パンは逆にグルテンなどで避ける人もいます。「いきなり!ステーキ」や唐揚げ「からやま」と同じく、肉を腹いっぱい食べたい需要に応えます。これはビッグマックジュニアや夜マックと同じコンセプトです。
日本マクドナルドは2018年1月29日からダブダブチ(ダブルビーフダブルチーズバーガー)を期間限定販売しました。ダブチの美味しさを超えることに挑むキャンペーンの一環です。ビーフパティ4枚にチェダーチーズが2枚挟まれています。肉の感覚が濃厚です。肉ばかりという点でビッグマック以上に肉が濃厚です。
日本マクドナルドは、2019年6月5日からダブルチーズバーガーから派生した期間限定メニューの販売を始めました。「濃厚チーズファンにささぐダブチ(ノグチ)」「やきにくソースがグッとくるベーコンダブチ(ヤグチ)」「トリプルチーズバーガー(トリチ)」です。
ベーコンダブチはヤグチと呼びたいために「やきにくソース」を使った感じです。ダブチのトモダチの位置付けです。林田力をダブチのトモダチにするならばハヤチやリキチになるでしょうか。
トリチはダブルチーズバーガーにビーフパティとチェダーチーズを1枚ずつ加えました。ビーフパティとチーズのボリュームはビッグマック以上になります。

ハラルマーケットがよくわかる本

ハラルマーケット・チャレンジ・プロジェクト 『ハラルマーケットがよくわかる本 イスラム巨大市場を切り開くパスポート』(総合法令出版、2013年)はハラルビジネスを開設した書籍である。本書はマレーシアに重点を置いて解説する。ハラルビジネスに出遅れている日本で価値ある書籍である。

ハラルはイスラム教の戒律を意味する。ハラル認証を獲得すれば、ムスリムに販売しやすくなる。ムスリムの人口は16億人で、ハラルマーケットの市場規模は2兆1000億ドルと言われる。また、ムスリム観光客のインバウンドでもハラルビジネスは重要になる。イスラム教は中東のイメージが多いが、ムスリム人口は東南アジアが多い。ムスリムは日本にとって、それほど遠くない。私はドラえもんの人形の写真をインスタグラムにアップしているが、東南アジアのドラえもんファンから「いいね」をもらうことがある。

日本企業のハラルビジネスの成功例としてキューピーや味の素がある。しかし、これらの企業もトラブルが起きている。キューピーの天使マークは偶像崇拝と批判された。味の素は発酵菌の栄養源を作る過程で触媒として豚の酵素を使用して問題になった。この種の話を聞くとリスクが高いと感じたくなる。しかし、本書は、この種のトラブルを乗り越えて両社がハラル市場で成功を収めていると指摘する。

日本では東急ホテルズ食材偽装事件など食品の表示を偽る事件が起きている。そのようなことをハラル食品で行ったならば企業にとって致命的である。その意味で日本企業がハラルビジネスに取り組むことは、日本の消費者にとっても良い効果をもたらすだろう。

宋名臣言行録

朱熹『宋名臣言行録』は北宋時代の名臣達の言動をまとめた書籍である。朱熹は朱子学の大成者である。名臣とあるが、必ずしも立派な人々とは限らない。政治闘争の陰険さにはウンザリさせられる。肯定的に評価できる人物の言動も秀才的なものが多い。歴史の書物を読むと感じる規格外の大物の面白さは乏しい。

北宋は科挙制度が徹底し、門閥貴族は姿を消した。これは歴史学的には発展と評価されることが多いが、官僚化して政争が陰険化した。冗官の増加も科挙制度の拡充の弊害である。これも現代日本の官僚制に重なる。

北宋の大きな政治改革は王安石の新法である。大商人・大地主達の利益を制限して中小の農民・商人らを保護する政策であった。既得権を奪われる大商人や大地主達は抵抗し、新法・旧法の争いという激しい政治対立を生んだ。表面的には新法を評価したい。

しかし、後には新法も無駄な役人や規制を増やし、政府の効率を悪化させる弊害が生じた。低利の融資制度も官人や大商人が偽って借りるという、政府の再配分政策が格差を拡大する本末転倒の運用がなされた。福祉国家の失敗や非効率という現代にも通じる問題である。やはり官僚が役所で考えた理想論は上手くいかない。

貞観政要

呉兢『貞観政要』は唐の太宗・李世民と名臣達の政治問答集。太宗は唐の第2代皇帝。その治世は「貞観の治」と呼ばれ、名君として名高い。太宗は質素倹約を奨励し、不相応な出費を許さなかった。これは堅実な消費者感覚と合致する。品質と価格が比例すると高価な品物を有難がる浅ましい拝金主義を否定する。

本書は古来より帝王学の教科書として扱われてきた。現代でもビジネスパーソンに読まれている。創業以上に守成の大変さを説いている。やる気を見せて頑張ることを美徳とする昭和の精神論根性論を否定する意味で経営者が本書を好むことは良い傾向である。

太宗の最大の美徳は他者の直言を受け入れた資質にある。中国古典は女性の存在感が薄いが、本書には皇后の意見によって行動を改めた話もある。唐代には中国至上唯一の女帝である武則天も登場する。耳に痛い他者の意見を受け入れて行動を改めることは、一般論として良いことである。現代人が、ここから行動指針を学ぶことも良い。

一方で歴史学的には別の視点がある。唐代は門閥貴族が蔭位の制を通じて一定の高位を維持していた。三省六部の門下省は法案を審査し、差し戻す権限を有していた。これは貴族の利害を代表して皇帝権力を監視する意味合いがあった。フランス絶対王政の高等法院のような存在である。後の宋代になると皇帝独裁となる。独裁には良いイメージがないが、歴史学的には貴族の既得権益を守る抵抗を排除する積極的意味がある。

最後の超大国インド

平林博『最後の超大国インド 元大使が見た親日国のすべて』(日経BP社、2017年)は、元駐インド大使がインドを紹介した書籍である。インドはカースト制があり、格差が大きい。それでも民主主義が浸透している。その背景の一つには有権者の積極的な政治参加意欲を挙げる。特に低カーストの投票率が高い。これは日本も見習うべきだろう。

インドは人口も面積も巨大であり、言語や民族も多様である。それでも国としての統一が保たれている理由として高級官僚システムを挙げる。高級官僚試験合格後は各州に配属され、中央政府の省庁と所属する州政府を行き来しながら昇進する。

外務官僚の著者が好意的に評価することは理解できるが、エリートの独善に陥ることはないのか。恐らく高級官僚が地域ボスを抑制することで、結果的には多くの発展途上国よりも良い行政が行われているのだろう。しかし、それは民主主義の本来のあり方からすると好ましくない。

本書はインド政府が政教分離を重視していると主張する。これは過去にヒンズー教徒とムスリムの対立と流血の悲劇があったからである。伝統的なインド政府の見方としては正しい。しかし、ヒンドゥー至上主義者と批判されがちな現在のモディ政権によって変わるかもしれない。

ジョージ・オーウェルGeorge Orwell『1984年』

ジョージ・オーウェルGeorge Orwell『1984年』(Nineteen Eighty-Four)は全体主義と監視社会のディストピアを描いたSF作品。ディストピア小説の代表作の一つである。当時は全体主義と言えばソ連のような社会主義体制が念頭にあった。実際、本書では党が党員の行動を規律している。

党には「2分間憎悪」という党員強制参加の行事がある。党が人民の敵と位置付けるエマニュエル・ゴールドスタインの映像が流され、それを見た党員が怒りや憎悪をぶつける。これは昭和の左翼の査問会や総括を見事に予言している。

一方で全体主義と監視社会のディストピアは社会主義体制に限らない。日本ではCoinhive事件のような警察による恣意的な摘発が起きている。政治的な言論の自由を別にして、警察の摘発の恣意性は独裁国家以下という面がある。「2分間憎悪」も昭和の左翼の査問会や総括だけでなく、ブラック企業の営業研修と重なる。

監視社会批判としては、盗聴・盗撮機能を持ったテレスクリーンという未来技術が注目されがちである。しかし、反体制派を装う人物に陥れられたり、場所を提供した人物が秘密警察であったりとアナログ的な人間関係が利用される。本質は技術よりも人間である。これも日本の官憲が好む手口と重なる。
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