ミチコ・カクタニ著、岡崎玲子訳『真実の終わり』(集英社)はトランプ大統領に代表される虚言やフェイクニュースを批判した書籍である。フェイクニュースが存在すること以上、虚言やフェイクニュースが非難されずに受け入れられていることが問題である。現実に2019年の台風19号で二子玉川が浸水したが、住民団体「二子玉川の環境と安全を考える会」が多摩川氾濫後にWebサイトを削除したとのフェイクニュースも流布された(林田力「台風19号の多摩川氾濫と住民運動へのフェイクニュース」ALIS 2019年10月14日)。

本書は、この背景としてポストモダニズムがあり、右派メディアとソーシャルメディアが加速させたと分析する。これに対抗するためには、教育と自由な報道が必要と主張する。ポストモダニズムの相対主義が背景になっているとの分析には同意する。しかし、絶対的な権威の押し付けに対抗するためにポストモダニズムは有用である。

20世紀的リベラル価値観は相対化してはならないという主張は御都合主義になるだろう。むしろ、21世紀を多く生きている世代にとって20世紀の価値観押し付けが息苦しさの原因になっており、その反感があることを直視しなければならない。20世紀的リベラル価値観の押し付けは反感を強めるだけである。

むしろ右派的なフェイクに対抗するためには虐げられた個人の立場に立ったポストモダニズムの相対主義を徹底することと考える。全体最適や目の前の問題の解決という名目で個人に負担や我慢を押し付けることを正当化しない。これを許してしまうと、例えば不法移民を規制するために何をやっても良いということになる。これに左派リベラルは、あまり有効に対抗できていないが、それは左派にも公共の福祉などの全体最適思考が強いためである。