佐藤英人『東京大都市圏郊外の変化とオフィス立地 オフィス移転からみた業務核都市のすがた』(古今書院、2016年)は、さいたま新都心、幕張新都心、みなとみらい21などの新たなビジネス街が東京一極集中の是正につながるか研究した書籍である。著者は地理学者である。

国土交通省は東京一極集中是正のために業務核都市を掲げた。その実現のために都心から30~40km圏の郊外に、さいたま新都心、幕張新都心、みなとみらい21が整備された。ところが、本書は「さいたま新都心」は東京資本の既存の支所オフィスの移転が中心と指摘する。「みなとみらい21」も横浜市内や神奈川県内からの企業が多いとする。ともに都心からのオフィス移転という国土交通省の思惑通りにはならなかった。

税金をかけて新しい産業基盤を作っても、地域内で移動するだけである。本当の意味で新たな産業基盤が創出される訳ではない。社会全体の底上げ効果は弱い。代わりに別の場所が寂れてしまう。今は20世紀ではなく、21世紀である。右肩上がりの経済成長という昭和の感覚で政策立案を進められない。ゼロサムゲームやトレードオフの発想が必要である。