ヴァンフリート星域会戦から第6次イゼルローン攻防戦の自由惑星同盟側の主人公はヤン・ウェンリーよりもシェーンコップである。薔薇の騎士(ローゼンリッター)連隊がクローズアップされる(『銀河英雄伝説外伝 3 千億の星、千億の光』)。シェーンコップが連隊長、リンツが連隊長補佐になる。リンツは常識人的な指摘をする役回りになる。ヤン艦隊におけるムライ参謀長の立場である。
組織が暴走しないために必要な役回りである。警察不祥事など日本型組織の不祥事は構成員の同質性が背景にある。メンバーの同質性が高いと皆が同じ方向にダッシュしてしまう。あえて常識的な正論を言うことも同質化を避けるために必要である。
ヤンの活躍は第6次イゼルローン攻防戦からである。ラインハルトを窮地に追い込むという恐ろしい手腕を発揮するが、あっさり描かれるので凄みを感じない。天才の凄さは見え難いものである。居眠りを上官に見られて悪印象を与え、成果を出しているのにエリートコースに乗れなかった。ヤンらしさがある。
ハルテンベルク伯爵の妹のエリザベートの悲劇の背景にサイオキシン麻薬があった。依存性薬物は本人だけでなく、周囲を破滅させる。既存社会の隠蔽体質が悲劇を拡大した。薬物の売人は公式に処断された方が悲劇の拡大を絶てただろう。これは現実の薬物犯罪にも該当する。
グリンメルスハウゼン文書に対するラインハルトの姿勢が素晴らしい。ラインハルトは目的のためならば手段を選ばず、門閥貴族の弱いところを突くという卑怯な手口を好まない。ラインハルトは武勲にこだわりを持ち、スピード出世したが、日本の平目公務員的な立身出世主義とは異なる。むしろ、自己の成果で評価されることを求めるストイックさがある。
ヤンの同期で秀才の誉れ高いマルコム・ワイドボーンは、あっさり退場する。ワイドボーンは傲慢なキャラクターであった。原作はラインハルトとヤンの二人の天才を際立たせるために他のキャラクターをどうしようもなく無能に描いているのではないかと思うことがある。しかし、それではラインハルトやヤンは相対的にまともというだけで天才にはならない。実際、『千億の星、千億の光』のヤンの評価に他人がミスするところで、まともな成果を出しているというものがあった。
これに対して藤崎竜版のワイドボーンに過信はない。士官学校のシミュレーションでヤン・ウェンリーに敗北した際は何故、負けたのか自省している。さらにラインハルトの天才を見抜いている(田中芳樹原作、藤崎竜漫画『銀河英雄伝説 3』)。
ワイドボーンの有能さを出し、ラインハルトを舐めずに全力で対峙し、それでも敗北したと描いた。それによってラインハルトや、そのラインハルトを追い詰めるヤンの天才を際立たせた。原作で軽視されていたキャラクターを再構成する。二次小説を読むような面白さがある。
組織が暴走しないために必要な役回りである。警察不祥事など日本型組織の不祥事は構成員の同質性が背景にある。メンバーの同質性が高いと皆が同じ方向にダッシュしてしまう。あえて常識的な正論を言うことも同質化を避けるために必要である。
ヤンの活躍は第6次イゼルローン攻防戦からである。ラインハルトを窮地に追い込むという恐ろしい手腕を発揮するが、あっさり描かれるので凄みを感じない。天才の凄さは見え難いものである。居眠りを上官に見られて悪印象を与え、成果を出しているのにエリートコースに乗れなかった。ヤンらしさがある。
ハルテンベルク伯爵の妹のエリザベートの悲劇の背景にサイオキシン麻薬があった。依存性薬物は本人だけでなく、周囲を破滅させる。既存社会の隠蔽体質が悲劇を拡大した。薬物の売人は公式に処断された方が悲劇の拡大を絶てただろう。これは現実の薬物犯罪にも該当する。
グリンメルスハウゼン文書に対するラインハルトの姿勢が素晴らしい。ラインハルトは目的のためならば手段を選ばず、門閥貴族の弱いところを突くという卑怯な手口を好まない。ラインハルトは武勲にこだわりを持ち、スピード出世したが、日本の平目公務員的な立身出世主義とは異なる。むしろ、自己の成果で評価されることを求めるストイックさがある。
ヤンの同期で秀才の誉れ高いマルコム・ワイドボーンは、あっさり退場する。ワイドボーンは傲慢なキャラクターであった。原作はラインハルトとヤンの二人の天才を際立たせるために他のキャラクターをどうしようもなく無能に描いているのではないかと思うことがある。しかし、それではラインハルトやヤンは相対的にまともというだけで天才にはならない。実際、『千億の星、千億の光』のヤンの評価に他人がミスするところで、まともな成果を出しているというものがあった。
これに対して藤崎竜版のワイドボーンに過信はない。士官学校のシミュレーションでヤン・ウェンリーに敗北した際は何故、負けたのか自省している。さらにラインハルトの天才を見抜いている(田中芳樹原作、藤崎竜漫画『銀河英雄伝説 3』)。
ワイドボーンの有能さを出し、ラインハルトを舐めずに全力で対峙し、それでも敗北したと描いた。それによってラインハルトや、そのラインハルトを追い詰めるヤンの天才を際立たせた。原作で軽視されていたキャラクターを再構成する。二次小説を読むような面白さがある。